靴づくりの教室ではミシンを使いますが、最初その練習も兼ねて仮の靴を作ります。練習だし気楽にどうぞとこちらは言うものの、ステッチが曲がってしまうとがっかりしてしまう人がおられます。物理的に縫い合わせるのが一番の目的で、初めて触る道具でもあるし、いきなりバッチリなステッチだとこちらが恐れ入ってしまいます。少々揺らいでいたとしてもしっかり縫い合わさっているのであれば、みっちり具の入ったサンドイッチや、持った瞬間重くてびっくりするような弁当のように上等です。こちらはそんな風に考えているのですが、大抵の人はそうは思わず縫い目に対して負い目を表明するのです。そんな中、曲がりくねって革の縁から脱線したりして自由すぎるステッチにもかかわらず「できました!」とあっけらかんと言う人が現れまして、何かコメントしたほうがいいのか迷いましたが、逸脱に厳しい日本社会への光明かもしれない、と前向きに捉えることにしました。ただその後、本番の縫製に取り掛かかりましたところ、練習の時は一体なんだったのかというほど真っ直ぐなステッチをかけられたのでした。
振れ幅があると思いもよらないものが出来たりすることもありまして、どこまで許容したものか線引きが難しいところなのですが、つい歓迎してしまうのです。DIY(どうなってもいいからやってみよう)、教室の姿勢としてはいかがなものかと思いますが、そのDIY精神の魅力に抗えないでいるのです。
